そのクリエイティブ、あらゆる環境で本来の力を発揮できていますか?

Hannah O’Neill

VP UK

多くのキャンペーンでは、クリエイティブの『数』が足りないということは、ほぼありません。本当に足りていないのは、そのクリエイティブに、パフォーマンス向上のためにもっと力を発揮してもらう工夫なのです。

多くのキャンペーンは何カ月も前からプランニングが始まります。核となるキャンペーンのアイデアが議論の末に確定し、キービジュアルやアセットが制作され、メディアプランはそれらを中心に組み立てられます。そこで最優先とされるのは、クリエイティブを正しく制作すること。つまり、ユーザーの目に止まり、記憶に残る独自性、高い関連性があり、説得力のあるものを作ることです。

しかし、これらのアイデアやアセットをオープンウェブで適用しようとすると、何が起こるのでしょうか。

テレビCMのために作られたアセットをディスプレイ広告で使うには調整が必要になり、SNS用のアセットも別の配信環境で使うには作り直す必要が出てきます。そして質が高く美しい動画は、効率的に配信するには容量が重すぎることが多くなっています。
つまり課題は「より多くのクリエイティブを作ること」ではなく、「すでに投資したクリエイティブが、どこで配信されても同じインパクトを発揮できるようにすること」なのです。

ここで、キャンペーンパフォーマンスの向上に効果を発揮するのが、よりスマートなクリエイティブの横展開です。
ブランドはより多くのクリエイティブを必要としているのではなく、そもそものオリジナルアセットが、その品質とインパクトを保ちながら、異なるメディア環境でも機能することを必要としているのです。


大切なのは量ではなく質

クリエイティブの開発や横展開という言葉を聞くと、同じキャンペーンの変化形を延々と作り続けることのように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。

目指すべきは、キャンペーンの背後にあるクリエイティブへの投資により、可能な限り大きなインパクトを導くことです。テレビCMでのキャンペーンはインパクトの強いウェブ施策になり得るし、SNS動画はディスプレイ広告に転用できます。そして容量の重い動画ファイルは、本来の品質や豊かさを損なうことなく、より効率的なウェブ施策へと変換することが可能なのです。

これらは新しいキャンペーンではなく、すでに存在しているクリエイティブが、異なる体験、環境において機能するための、別の手法にすぎません。

優れたクリエイティブは、ユーザーに届く形になって初めて機能します。読み込みが遅い、環境に合っていない、あるいは削ぎ落とされすぎてインパクトを失ってしまった秀逸なアセットは、その役目を果たしていると言えるのでしょうか。

つまりクリエイティブを横展開するということは、クリエイティブの量を単純に増やすことではなく、クリエイティブの質を守りながらその活用の幅を広げていくということです。


よりスマートな横展開は実際に何を変えるのか?

パフォーマンスへのインパクトは、「広告という情報提供の機会に気づくこと」と「それに基づいて行動すること」の間にある摩擦を取り除くことから生まれます。これは主に3つのメリットをもたらしてくれます。


1. 最適化の機会が増える

キャンペーンの結果に確固たる確信を持ってスタートするキャンペーンなど存在しません。どのようなメッセージが、どのようなストーリーが、どのようなビジュアル表現が、そしてどのようなフォーマットがユーザーに響くかといった点について、強力な仮説を立てることはできます。しかしキャンペーンが実際に走り出せば、実際に何が人々の心をつかんでいるのかが、パフォーマンスデータによってより鮮明に見えてきます。

ある特定のクリエイティブが好調であれば、それを軸に発展させることができます。別の表現がうまくいっていなければ、調整すればいい。別の商品やメッセージの方が、その時点でより適切だと分かれば、ゼロから作り直すことなくキャンペーンに組み込むことも可能です。

臨機応変に横展開することは、学びと行動の間の距離を縮め、キャンペーンがまだ走っている間に改善できる機会を増やしてくれるのです。


2. 環境により適したクリエイティブになる

品質的に優れたクリエイティブが、そのままキャンペーンにおいて優れたクリエイティブになるとは限りません。フォーマット、画面サイズ、ユーザー行動、読み込み体験、有効なアテンション、これらすべてが、アセットがどう機能すべきかに影響を与えます。

テレビやSNS用のアセットを単純にリサイズしただけでは、必ずしもディスプレイ枠で効果を発揮するとは限りません。クリエイティブは、元のコンセプトを失うことなく、その環境に合わせて調整される必要があるのです。

したがってクリエイティブの横展開は、単なる制作作業以上のものになります。それは、実際にそのクリエイティブが届くインプレッションに、より適した形で配信を仕上げるための機会となるのです。


3. 技術的に妥協する必要がなくなる

この点は動画においては、特に顕著になります。

ブランドはますますリッチで高品質な動画をプロモーションのために制作していますが、これらは必ずしもオープンウェブを想定して作られているわけではありません。ファイルサイズが大きいと技術的な制約が生まれ、ディスプレイ枠で同じ体験を効果的に届けることは難しくなります。

その結果、妥協が生じるのです。クリエイティブを単純化する、インパクトの弱いバージョンを使う、あるいはその環境での配信自体を諦める、といった選択です。

よりスマートに、扱いやすくクリエイティブを適応調整させることは、この構図をまったく変えることができます。「既存のアセットがインターネット上で機能するかどうか」を問うのではなく、「どうすればそこでうまく機能させられるか」という点に集中するようになるのです。

妥協に甘んじないことが大切な理由は、技術的なパフォーマンスとクリエイティブなパフォーマンスが、決して切り離せるものではないからです。体験が損なわれれば、アテンションを獲得する機会もまた損なわれてしまうのです。


まとめ

クリエイティブを臨機応変に適応させる力に価値があるのは、それがブランドにとって市場投入できるアセットを増やしてくれるからではありません。優れたクリエイティブは、それが本来課された役目、すなわち「ブランドとユーザーをつなげること」を果たすチャンスを、より多く与えてくれるから価値があるからです。

パフォーマンスは、クリエイティブやメディア単体から生まれるものではなく、正しいアイデアが、正しい人に、正しい環境で、印象を残すチャンスのある形で届いたときに生まれます

チャンスとは、ただ多くのクリエイティブを作ることではなく、優れたクリエイティブがインパクトを発揮する妨げになっている障壁を、取り除くことなのです。

だからこそ、今問うべきは「十分なクリエイティブがあるか」ではないのかもしれません、問うべきは、「すでに作ったクリエイティブに、パフォーマンスを発揮するあらゆるチャンスを与えられているかどうか」であるといえるでしょう。