ストーリーテリングからセリングへ ─ クリエイティブ=マーチャンダイジングの時代
Nick Titmus
VP Retail media and commerce partnerships
2026/01/09

デジタルコマースが急速に進化する世界において、クリエイティブが売上成果を左右する主役になりつつあります。
これまで長い間、リテールメディアやコマースの世界におけるクリエイティブは静止画がメインとされてきました。また、検索連動型広告から進化したネイティブ広告は、商品画像を表示するだけで、真の意味でのクリエイティビティがあるとは言い難いものでした。
しかし、その時代は終焉を迎えています。
リテールメディアネットワークの台頭、ダイナミックなマーケットプレイス、そしてAI主導による買い物体験の登場により、クリエイティブの概念は根本から覆されています。
今日、クリエイティブは単に「アイデアを見せる」ものではありません。どの商品を、どの消費者に、どのようなストーリーで、どのタイミングで見せるかを決める「コマースの仕組み」そのものなのです。
こうした現状においては、クリエイティブはまさにマーチャンダイジングであると言えます。
広告はもはや単なる広告ではなく、売り場であり、商品であり、販売員でもあります。実際、WARCに掲載されたDell Researchによると、ディスプレイ広告の成果において、クリエイティブは広告配信面よりも2倍重要だとされています。
さらに、消費者の行動にも変化がみられています。
「認知 → 検討 → 購入」という従来のファネルは、もはやすべてに機能するものではなくなり、ファネルはより即時的な形へと崩れつつあります。短尺動画、フィード内の商品カルーセル、AIが生成したレコメンドを見た瞬間に、購買が決まるケースが増えているのです。
この流れは業界全体に広がっています。Digidayは「リテールメディアネットワークの台頭」により、広告主がプログラマティック、CTV、ソーシャルを横断したフルファネル戦略を追求するようになり、従来型のファネルから、即時的に購入につながるコマース主導の体験へとシフトしていると指摘しています。
現在は、あらゆるタッチポイントが購買可能な状態となっており、すべてのインプレッションが、販売につながる可能性を持っているのです。
つまり、すべてのクリエイティブは、リアルタイムにファネル全体をカバーする必要があるということです。
アッパーファネルのクリエイティブは、インスピレーションを与え、差別化し、アクションにつながる導線を構築する
ミドルファネルのクリエイティブは、コンテンツから離脱させることなく、比較・検討を促進する
ローワーファネルのクリエイティブは、価格・在庫・販売状況をリアルタイムに反映し、購入を完結させる
これらのいずれかが欠けると、消費者はすぐに離脱してしまいます。しかしながら、ブランドにこれらすべてに対応するような余裕があることはとても稀です。
On-siteとOff-site:「売り場」として機能するクリエイティブ
小売業者のサイト上では、クリエイティブはデジタル上の売り場として機能します。
メインとなるクリエイティブがアテンションを集められなかったり、実際に購入されるSKU(サイズ・仕様・価格)と一致していなかったりすると、機会損失が生まれ、コンバージョンは大きく低下します。
商品選択の多くは論理ではなく感情で決まります。人は「考える」前に「見る」ことで動くのです。だからこそ、クリエイティブは魅力的でありながら、実際に購入可能な内容と正確に一致していなければなりません。
一方、オフサイト(オープンウェブ、ソーシャル、検索結果、ストリーミングTV)では、クリエイティブは店舗の入口としての役目を果たします。
目的は単に注意を引くことではなく、購買の瞬間まで消費者を導くことです。広告は配信環境や消費者の意思や興味に応じて変化し、アテンションを実際のアクションへ変容させる必要があるのです。
今、成果を出しているクリエイティブは以下の事柄を理解しています。
誰が買い物をしているのか
何を求めているのか
その地域に在庫があるのか
どう説得するのが最適か
次にどこへ誘導すべきか
これはもはや広告ではなく、デジタルマーチャンダイジングです。
競争の激しいコマース市場で勝つために、ブランドはフルファネルを前提とし、リアルタイムデータに基づき、最初の接触から「売れる」クリエイティブに投資しなければなりません。
最後にひとつ。The Media Leaderの記事はこう述べています。
「リテールメディアに必要なのは広告の量ではなく、より賢いクリエイティビティである」。
なぜなら、クリエイティブはもはや物語を語るだけの存在ではなくなり、何が売れるのかを決める存在となっているからです。


