オープンウェブをシンプルに:SeenThis CEO Jesper Benon インタビュー

オープンウェブが今、改めて注目を集めています。そして、それは当然の流れであると言えるでしょう。
長年にわたり広告予算は、一部の巨大プラットフォームに集中してきました。しかし、実はユーザーのオンライン上での時間の61%はオープンウェブで費やされているにもかかわらず、広告予算の72%は、その一部のプラットフォームに投下されています。このギャップは、オーディエンスの価値や在庫品質から生まれているのではなく、問題は「シンプルさ」にあります。
SeenThisのCEO Jesper Benon は、業界の大きな変化は常にテクノロジーが「不可能を実用的なものに変えたとき」に起こると語ります。2026年を前に、彼はまさにそれがオープンウェブで起きていると感じています。私たちは、何が変わりつつあるのか、どのような技術革新が可能性を広げているのか、そして彼が見据える未来について話を聞きました。
広告主や代理店のメディア戦略にみられる変化としては、どのようなものが挙げられますか?
長年「多様化」が促されてきましたが、メディア予算の多様化についてはすでに実際の広告予算に反映され始めています。よってここでは、以下4つの点に注目したいと思います。
まず1つ目に、プラットフォームのCPMが上昇する一方、リーチは頭打ちになっています。つまり、以前のように結果がうまく合わなくなってきているということです。
2つ目に、プライバシーに関する変化によってターゲティングの競争条件が平準化され、プラットフォームが持っていたデータ面での優位性が縮小しています。その結果、技術的な差は小さくなり、競争は「品質」「成果」「透明性」へとシフトしています。
3つ目に、広告主がオープンウェブに対して、単に検討する段階ではなく、実際に予算配分の目標を設定し始めています。
そして4つ目に、AIがバリューチェーン全体の複雑さを軽減しています。プランニング、配信、最適化はより自動化・効率化され、複数のエコシステムをまたいだ運用が容易になっています。将来的には、エージェント主導の売買がさらに進み、メディア取引のプロセスは一層効率化されていくでしょう。
こうした要素、すなわち経済的プレッシャー、技術的な均衡、そして実際のコミットメントが、今の変化を生み出しています。そしてAIがその変化をさらに加速させています。多様化を重んじる風潮は以前から存在していましたが、今ようやく、それを実現するための条件が整ったのです。
オープンウェブとは何ですか?なぜ重要なのでしょうか?
オープンウェブとは、人々が自分の意思で訪れ、ニュースを読んだり、関心のあるスポーツコンテンツをチェックしたり、料理、旅行やカルチャーなど、興味のあるものを探しに行く場所です。そこには、独立系のパブリッシャーやクリエイターが存在し、自らそのコンテンツを求めてやって来るオーディエンスのためにコンテンツを作っています。実際の調査でも一貫して示されているように、人々はオンライン時間の大半をこうした場所で過ごしています。
一方で、ソーシャルプラットフォームは、人と人をつなぎ、アルゴリズムがユーザーが見たいと予測するコンテンツを提示し、オーディエンスを自社のエコシステム内に留めるという役割をうまく果たしています。しかし、人々のオンライン上の生活はそこだけで完結するわけではありません。広告もまた、そこだけに留まるべきではないのです。
とはいえ、広告主にとってオープンウェブの活用は難しいものであったのも、また事実です。断片化され技術的に複雑であることに加え、ブランドセーフティ、ターゲティング、クッキーの不確実性、アドフラウドといった懸念もありました。さらに、広告が適切に表示されなかったり、期待どおりの成果が出なかったりすると、その不安はさらに強まりました。
こうした要因が重なり、オーディエンスが実際に存在する場所と、広告予算が投資される場所との間に大きなギャップを生み出してきたのです。
SeenThisはどのような課題を解決するために設立されたのですか?
率直に言うと、オープンウェブにはまだ活用されていない驚くべき可能性があると気づき、技術革新によってそれを解き放てると確信したことがきっかけでした。
その中でも、最も明確で、かつ早急に取り組むべき領域が動画でした。動画は配信コストが高く、在庫へのアクセスに制約があったり、品質を妥協せざるをえなかったり、また、配信が不安定といった課題に縛られていました。広告主はリーチ、コスト効率、品質のどれかを選ばなければならない状況だったのです。どの選択をしても、1インプレッションごとの価値を最大限に引き出すことはできていませんでした。
私たちは、オープンウェブを本当に機能させるパートナーになるためにSeenThisを立ち上げました。その出発点が、可能性と現実のギャップが最も大きかった動画です。
SeenThisのアダプティブストリーミング技術は、そうした障壁を打ち破り、既存のDSP、SSP、そしてエージェンシーパートナーとシームレスに連携しながら、動画広告を本当に「機能するもの」に昇華させます。最高の品質のまま瞬時に読み込まれた動画は、1インプレッションごとにリアルタイムでスピードと品質の両方を最適化します。
その結果、制約に合わせて工夫するのではなく、オープンウェブがもつ本来の可能性を解き放つことができるのです。
一般的にディスプレイ広告は、他のチャネルと比較して、クリエイティブのインパクトが弱いと考えられていますが、SeenThis はどのように広告主の可能性を広げているのでしょうか?
技術的な制約により、動画は品質面での妥協を強いられてきました。すべてを圧縮し、解像度を下げ、ビジュアルのインパクトを犠牲にする ― それがインフラ上、動画広告を配信するために必要な方法であったからです。
私たちのストリーミング手法は、そうした制約を取り払います。最高の品質のクリエイティブ、高解像度、ファイルサイズの制限はなし ― それでいて瞬時に読み込まれる。広告主は技術的制限に合わせて設計するのではなく、インパクトを最大化するためにデザインできるのです。
そして、その効果はエンゲージメントが証明しています。完全視聴率は何倍にも向上し、ブランド想起も大幅に強化されています。クリエイティブの質が損なわれなければ、オーディエンスは実際に視聴し、行動に移すのです。
「オープンウェブをシンプルにする」とは?
それは、オープンウェブにふさわしいインフラを構築し、他のチャネルと同じくらいシンプルで分かりやすいものにすることを意味します。
現在は、私たちSeenThis が最も得意とする領域から始めています。ファイルサイズに関係なく瞬時に動画を配信し、自動で最適化を行い、専門的な知識がなくてもプレミアム在庫を活用できる環境を実現すること。つまり、オープンウェブをプラットフォームと同じくらい簡単に活用できるようにすることです。
そして、そのインフラが整えば、経済性は大きく向上します。実際に従来の配信方法と比較して、CPMやクリック単価が大幅に低下(改善)しています。これこそがテクノロジーの進化が可能にすること―より少ないコストで、より高い成果を生み出すことです。
しかし、オープンウェブや広告全体におけるインフラの課題は、単一のフォーマットにとどまりません。動画は私たちがそのモデルを実証した領域であり、今もなお主軸としての取り組みではありますが、私たちはオープンウェブに存在するあらゆる障壁を取り除き続けたいと考えています。
もう少し俯瞰でとらえた場合、広告予算とキャンペーンの効率性の他には、本当に重要なものは何でしょうか?
大きく2つあると考えています。
まず1つ目は、広告主にとってのビジネスチャンスです。今はまさに、テクノロジーの革新によってその方程式を根本から変えられるタイミングにあります。オープンウェブは、これまで本来持っていたアテンションやエンゲージメントを、効率的かつ大規模に提供できるようになりつつあります。それによって、広告主がオーディエンスにリーチし、影響を与える方法にまったく新しい可能性が生まれます。そしてAIがリアルタイム最適化の可能性を加速させることで、可能性と現実のギャップはこれまで以上のスピードで縮まりつつあります。
2つ目は、メディアエコシステム全体の健全性と多様性です。これは、独立系パブリッシャーと大規模なプラットフォームが共存しながら発展できる、バランスの取れたインターネットを実現するということでもあります。オープンウェブにおけるパフォーマンスの摩擦を解消することで、独立系ジャーナリズム、ローカルニュース、そしてニッチなクリエイターが持続可能であり続けるために必要な、いわば「酸素」を提供することができます。
基盤となるテクノロジーをすべての人にとってより良く機能させることで、私たちは単に広告主がオーディエンスにリーチするのを助けているだけではなく、消費者と業界の双方に利益をもたらす、透明で分散的、かつ多様な情報環境を支えているのです。
SeenThis がすべての目標を達成したら、業界はどのように変わると思いますか?またSeenThis が目標を達成するということは、何を意味するのでしょうか?
まず「SeenThis が目標を達成する」とは、オープンウェブが自然にメディアプランに含まれるようになることを意味します。つまり、他のチャネルと同じようにシームレスで標準的な存在になることです。
結果として、質の高いパブリッシャーが、優れたユーザー体験を提供することで安定した広告収益を得られている状態になると考えています。
そして 、SeenThis はそれを実現に導くパートナーです。まずはプレミアム動画広告から開始し、より進化させてまいります。

