クリエイティブとメディアの再統合。アテンションこそ現代の「通貨」

John Osborn

President US

私がこの業界で過ごしてきたこれまで、クリエイティブとメディアは別々のものとして存在していました。いわば、まったく別のフロアや別のビルにいるような、ときには別の都市に存在しているようなものだったのです。どちらも同じクライアント(ブランド)を対象とするという意味では共通していますが、考え方はまったく異なっていました。クリエイティブチームが広告をつくり、メディアチームがそれをどこでどう配信するかを決める。そして、その両者の隙間で、誰にもみられない広告が生まれ、時代遅れの効果測定手法により、多くの価値が失われていったのです。

こうした典型的なモデルが機能していたのは、もはや過去、テレビが市場を支配し、広告枠が希少だった時代です。信頼できる適切な枠を買い付けることができれば、インプレッションだけで十分だったのです。しかし、その時代は終わりました。1つの画面に向けられる平均的なアテンションタイムは、この20年で2分半から47秒未満にまで落ち込んでいます。環境が変わったにも関わらず、効果測定方法は変わらずにそのままであったということです。

私たちは、広告が「形式上」配信され、「形式上」インプレッションを獲得し、「形式上」ビューアビリティの目標を達成する - そんな業界をつくり上げてきました。しかし、実際に見られている広告は、減る一方です。私はこれを、広告の「Unbeautification(ありのままに戻すこと)」と呼んでいます。どれほど優れたクリエイティブであっても、誰も気にしていない場所に届けられてしまうと、それは存在しないのと同じことになります。これは、誰かが悪いというものではなく、構造的な問題であり、クリエイティブとメディアが共に解決すべき課題であるといえるでしょう。

インプレッションは、つねに「代替指標」にすぎなかった

ビューアビリティによって、私たちは「進化」してきました。しかし、「視認可能な広告 = 実際に見られた広告」ではありません。インプレッションが、必ずしも印象(impression)を残すとは限らないのです。すべてのベンチマークを達成しても、誰にも届いていないということが起こり得ます。そして、誰も見ていなければ、そこに成果は生まれません。ブランドリフトもしなければ、検討意向の改善も見えない。広告は「形式上」存在していても、機能していないという状態です。

この数年、私はこうした現実を目の当たりにしてきました。数字は一定の結果を示すものの、現実ではまったく異なることが起こっている。レポート上はすべての項目を満たしているのに、本来届けるべき人々の心には何も残せないキャンペーン。そうしたものをいくつも見てきました。

我々が次に見るべきは、よりシンプルで、より誠実な指標、つまり、価値を測る実際の単位としての「アテンション」です。配信されたインプレッションでも、ビューアビリティのスコアでもありません。人が実際にどれだけの時間見ていたか - アテンションタイム(attentive seconds)で測る、ということです。これこそが、メディア投資をビジネス成果に結びつけるまさに「通貨」なのです。あなたの存在に気づきもしなかった相手の心を、動かすことはできないのですから。


アテンションは、実際、どこにあるのか

米国の消費者は、オンラインで過ごす時間の60%以上を「オープンインターネット」で費やしています。それにもかかわらず、デジタル広告費のおよそ70%は「ウォールドガーデン」へと流れ込んでいます。

このギャップがなかなか埋まらない理由の一つは、ウォールドガーデン自身が、その効果測定の担い手でもあるという点にあります。

しかし、数々の実データによりこの事実をもはや無視できないものになりはじめています。Lumen Researchによると、SNS動画が生み出すアテンションは1インプレッションあたり平均1.5秒。従来型のアウトストリーム広告は2.1秒。そしてオープンウェブ上のストリーミング動画は2.5秒に達します。最も多くの予算が投じられているチャネルが、実際の獲得するアテンションは最も低くなっているのです。

予算とアテンションは、まったくの別物です。しかし今、効果測定の手法がようやく追いついたことにより、私たちはそれをはっきりと「確認する」ことができるようになりました。SeenThisがLumen Researchと共同で行った調査では、アダプティブストリーミングが従来型の配信に比べて1.7倍のアテンションを生み出すことが明らかになっています。アテンションは、確かに存在し、測定できる。そしてそれは、オープンウェブ上に存在しているのです。

私が関わってきた中で優れた評価に値するキャンペーンでは、クリエイティブとメディアが別ものとして扱われることは、決してありませんでした。人がどれだけ長く見るかを作るのは環境であり、クリエイティブがその人がそこにとどまるかどうかを決める。業界に必要なのは、新しいフレームワークではなく、もっとシンプルな問いだと思っています。「誰かが、本当に見たのか?」。クリエイティブとメディアそれぞれのチームが、その問いを軸に共に最適化を始めたとき、無駄は減り、仕事の質は高まり、成果は自ずとついてくるはずです。

これこそが、クリエイティブとメディアの統合により生まれる価値なのです。


John Osborn:
SeenThisの米国プレジデント。以前は、OMD USAのCEO、およびBBDO New YorkのCEOを歴任


出典:
The Trade Desk『The Rise of the Premium Internet』(Sellers & Publishers Report、May, 2024), GlobalWebIndex(GWI Core)、米国の18歳以上の成人、2023年通年データからの引用に基づく。
eMarketer『Triopoly's share of ad spend』(2025年7月29日)


*この記事は、2026年6月にSeenThis から発表された記事を意訳したものです。