SeenThis CEO Jesper Benon が語るSeenThisの展望

SeenThisのCEO兼共同創業者であるJesper Benonが、アダプティブストリーミングテクノジー、2025年のSeenThisの将来像、そしてこれから更なるブランド成長を目指すリーダーの皆さまに向けたアドバイスなどを語ります。
経歴とSeenThisでの現在の役割、また、SeenThisが他社とどのように差別化を図っているのか、教えてください。
私の経歴はほぼSeenThis一筋ですが、同時に長年他社の取締役も務めてきました。スウェーデンのJönköping大学でキャリアをスタートさせ、その後Marcus Myrberg と Kristofer Ljungdahlと共にSeenThisを設立しました。
多くのスタートアップ同様、Marcus、Kristofer と共に、主軸となるサービスの形を幾度も変えながら8年間の試行錯誤の末、業界にストリーミング広告とコンテンツを提供するという方向性に落ち着きました。
私は常に、既存事業を最適化しわずかな改善で満足するのではなく、最新技術を取り入れながら物事をより良く行う方法を見つけることに強い関心を持ってきました。
SeenThisが提供しているソリューションやメリットという点で考えると、現時点で提供可能な唯一の企業として差別化することができます。ストリーミング広告を提供する企業は増えていますが、SeenThisの差別化の中核となる要素は、データストリーミングの前と後で行われている処理にあります。ストリーミングとは、単に「A」から「B」へ何かを移動させる手法に過ぎません。しかし、SeenThisは、送信前(「A」の前)に、業界で主流となっているあらゆるデータ仲介技術で受け入れられ・再生されるよう最適化し、データがデバイスに到着後(「B」の後)にはすべての動画が瞬時に再生が開始されます。さらにデバイスの種類・OS・ローカル環境・接続状態に関わらず最高画質を保証するため、必要最小限のデータのみを送信します。SeenThis のテクノロジーの中で最も重要でインパクトがある部分は、ユーザーのデバイスへのストリーミングを開始した際であると言っても良いかもしれません。
SeenThisは、アダプティブストリーミングテクノロジーを活用して、読み込み速度の高速化やオーディエンスエンゲージメントの向上などデジタル広告のパフォーマンスをどのように向上させているのでしょうか?
SeenThisは、クライアントのクリエイティブをウェブサイトやアプリ内に配信する技術として、アダプティブ・ビットレート・ストリーミング(ABR)を採用したプラットフォームを構築しています。
まず、クライアントから提供されたクリエイティブを当社でストリーム配信可能な形に変換します。そして、広告配信予定の全広告枠に向け、広告サーバーおよびDSP向けのタグを発行・提供します。このタグは業界で日常的に使用されている一般的なアドタグです。プログラマティック取引において入札が決まったり、またはパブリッシャーのメディア上にて直接タグが呼び出されると、SeenThisのテクノロジーが起動し、広告枠がデバイスのスクリーンに表示された時点でクリエイティブのストリーミングが開始されます。
ABR は、視聴者のインターネット接続速度に応じて動画ストリームの品質をリアルタイムで調整します。接続が良好な場合、ABRは動画品質を向上させ、より鮮明で詳細な映像を実現します。接続が弱まった場合、ABRはバッファリングや中断を防ぐため自動的に品質を低下させます。これは、バケツがこぼさずに受け止められる水の量に応じて、ホースからの水の流れを調整するようなものです。
このストリーミングは、従来の動画配信形式で見られるような単一のファイルではなく、多数の小さなデータパケットで構成されています。これらのデータパケットは順次配信されるため、一度に配信される動画はわずか2~4秒分のみです。個々のデータパケットは単一の大きなファイルよりもはるかに軽量なため、従来の動画配信技術よりもはるかに容易にストリーミングと再生が可能になります。これにより、人間がほとんど感知できないレベルにまで配信速度が向上し、広告枠が表示された瞬間に動画広告が再生できるようになります。
この速さこそがパフォーマンス指標向上の本質です。瞬時に再生される動画は視聴者の目を引き、パフォーマンス向上を牽引します。動画がすぐに再生されないと、ファイルのダウンロード中に視聴者がスクロールして通り過ぎてしまうという現実的なリスクがあります。今日の動画広告の大半はダウンロード技術によって配信されており、これがSeenThisを利用するブランドがパフォーマンス指標とROAS(広告費用対効果)で大幅な向上を実現する基盤となっています。
SeenThisは、データ消費量と環境負荷を低減しながら、デジタルキャンペーンの効果を最大化する上で、どのように企業を支援していますか?
パフォーマンスと持続可能性はSeenThisによって密接に連携した上で実現されています。ABRの利点はオン/オフを切り替えるものではなく、当社の全ソリューションに不可欠な要素となっています。したがって、クライアント向けに提供するあらゆるソリューションには、パフォーマンスと環境面でのメリットが標準で付帯されています。
もう一つ、重要かつ大きな影響は ROAS(広告費用対効果) です。ブランドや代理店は、ソーシャルプラットフォームや動画広告ネットワークを利用する場合と同等、あるいはそれ以上の動画広告ボリュームを、ディスプレイメディアを活用して配信することが可能になります。SeenThis は、価格の柔軟性が高く、「誰に・どこで・いつ広告を見せるか」という主導権を広告主がより強く持てるディスプレイ枠に動画をストリーミング配信します。
2024〜2025年にかけてインハウス化が大きな話題となる中、SeenThis は動画広告の主導権を 100%インハウス に取り戻すことを可能にします。ブランドや代理店は、自らのメディアバイイングで動画配信を実行でき、専門的な動画ベンダーやプラットフォームに外注する必要がありません。
業界全体で発生しているデータ浪費の多くは、ユーザーの端末にダウンロードされたにもかかわらず、実際には視聴されない広告によって引き起こされています。SeenThis のソリューションは、視認可能な枠にのみストリーミングし、スクロールされて視認可能枠外に出ると配信は停止されます。これにより、実際に消費・視聴されたクリエイティブのみが配信され、VAST (Video Ad Serving Template) 技術を用いた従来型の動画配信と比べて、無駄なデータ転送を大幅に削減できます。
SeenThis は、広告主がキャンペーンの カーボンフットプリントをリアルタイムで追跡・測定できる「エミッション・ダッシュボード」を開発しました。このツールでは、CO2e削減量、実際のCO2e排出量、データ削減量を可視化でき、広告活動が環境に与える影響を把握し、より持続可能な意思決定を行うことが可能になります。
モバイル広告において、アダプティブ・ストリーミング技術を導入する際に、ユーザー体験、技術的制約、スケーラビリティの観点で、ブランドが直面すると予想される課題は何ですか?
最大の課題は技術的というより 社会的・組織的な側面にあります。多くの場合、広告予算は「動画」か「ディスプレイ」に分けて管理されていますが、SeenThis はディスプレイ枠に動画をストリーミングするため、予算設計の考え方を再構築する必要があります。ただし、過去7年間の実績から、これは 高いパフォーマンスと環境負荷の低減という文脈において、大きな障壁ではないことが証明されています。
ディスプレイ広告の在庫規模を考えると、SeenThis は動画の活用範囲を制限するどころか、むしろ 拡張 します。多くのブランドから、ディスプレイ広告枠のメディアバイイングをより有効活用でき、これまでにないスケールで動画配信が可能になる点を評価いただいています。従来、ディスプレイ広告は低コストであることから ダイレクトレスポンス(パフォーマンス)向け、動画は大規模な ブランディング向けとされてきましたが、実際には動画は消費者のアテンションを強く引きつけ、ダイレクトレスポンスにもブランディングにも非常に適しています。
SeenThis は、高品質な動画をスケールさせ、ブランドがターゲットとするオーディエンスに届けることを可能にし、動画広告の民主化を実現しています。
SeenThis は、オーストラリアでは最近の2つの代理店とパートナーシップを結びましたが、今後彼らとどのようにエコフレンドリーなストリーミングを推進し、デジタル広告業界の革新、市場成長、持続可能性を高めていくのでしょうか?
オーストラリアでの計画は、他のすべての市場と同様です。つまり、高品質でコスト効率の高い動画ソリューションを消費者に届けることです。現地のオーストラリア企業や代理店と協業することで、各市場の特性やメディア活用方法に合わせた ローカルに最適化されたソリューションを提供していきます。
私たちがクライアントと共同開発するすべてのソリューションの中心には パフォーマンス があります。CO2e排出量の削減から、消費者エンゲージメントの向上、CTR・ROAS・ROI・ブランド想起・認知度といったKPIの改善、さらにはオーストラリア市場特有のユニークなメディア枠の開発までが含まれます。
クライアント、そして私たち自身も、これからの未来に大きな期待を寄せています。
今年、ご自身、そしてSeenThis チームが解決しようとしている最大の課題は何ですか?
あらゆる広告施策において、選択したディスプレイ枠に スケール可能で、コスト効率が高く、高品質な動画を届けることです。私たちのミッションは「より小さなフットプリントで、より速いインターネットを実現すること」であり、予算規模に関係なく高品質な動画を利用可能にすることは、その使命の基礎であると思っています。
動画配信をスケールさせることで、無駄なデータ転送を回避し、広告が環境に与える影響を低減すると同時に、ストリーミングならではの 高パフォーマンスな広告体験を消費者に提供します。
これからブランド成長を目指す他のリーダーへ、アドバイスをいただけますか?
データドリブンな意思決定を行うこと
顧客行動を理解し、データに基づいて戦略を策定・調整してください。正しいオーディエンスに、誠実でブランドに沿ったコミュニケーションを行い、専門用語や誇張表現は極力避けましょう。
イノベーションと適応力を育てること
チーム全員からのアイデアを奨励し、市場変化に迅速に対応できる体制を整えてください。グローバルでありながらローカルに根差す姿勢が重要です。
顧客体験を最優先にすること
顧客の声に耳を傾け、パーソナライズされた体験と測定可能な成果を提供することで、信頼とロイヤリティを築きましょう。
強力なパートナーシップを構築すること
価値観を共有できる企業との協業は、相互成長と将来戦略において貴重な意義を持ちます。
人材への投資
優秀な人材が価値を感じ、意見を述べられる環境を整えることが、成長の原動力になります。
明確な目標とKPIを設定すること
進捗を測定し、必要に応じて戦略を調整してください。
本物で、目的主導であること
ブランドの価値観を明確にし、社会的責任を示すことで、深い信頼関係を築くことができます。
最後に、最近読んでいるもの、またはおすすめの本を教えてください。
最近は読書の時間があまり取れず、短いポッドキャストをよく聴いています。読書といえば、子どもたちと一緒に読む児童書が中心です。スウェーデン出身者としておすすめしたい本は以下です。機会がありましたら、ぜひ手にとってみてください。
『Lagom(ラーゴム)』リンネア・ドゥンネ
バランスと節度を重んじるスウェーデン文化を紹介した一冊『ドーナツ経済学』ケイト・ラワース
持続可能な成長を考える起業家にとって示唆に富む内容『The Nordic Theory of Everything』アヌ・パルタネン
北欧の価値観や社会システムを通じて、働き方や生き方を考察した本


